英国王立園芸協会(RHS)は、ユリの園芸品種をその交配親になった原種によって8つのグループに分け、そこに原種系を加えて9つに分類しています。同じグループに近縁の園芸種がまとまっており、この分類方法は現在最も広く受け入れられています。最初に発表されたのは1964年で、2025年現在の最新は2007年版です。

参照:The International Lily Register and Checklist 2007

Div.Ⅰ アジアティック・ハイブリッド(Asiatic hybrids)

スカシユリを中心に、アジア原産のユリを交配した品種群です。総称して「スカシユリ」とも呼ばれます。

日本では江戸時代から、エゾスカシユリ×イワユリやイワトユリによるスカシユリ品種群を作り、そこにオニユリまたはコオニユリを交配して、種間雑種であるタツタユリを作ってきました。これらが欧米に導入されると、ヨーロッパのスカシユリも入って、アジアティック・ハイブリッドが生まれました。

オニユリやスカシユリの強健さを持ち、丈夫で栽培しやすい性質です。多彩な花色、中輪、多花。上向き咲きが多いですが、横や下向きの品種もあり、花の形もさまざまです。香りはほとんどありません。

ユリの中では安価で、切り花や庭植えなど用途も広く、世界中で大量生産、大量消費されています。

Div.Ⅱ マルタゴン・ハイブリッド(Martagon hybrids)

マルタゴンリリー、タケシマユリ、クルマユリなどの交雑種です。

Div.Ⅲ ユーロコーカシアン・ハイブリッド(Euro-Caucasian hybrids)

マドンナリリーとヨーロッパ原産の近縁種の交雑種です。

Div.Ⅳ アメリカン・ハイブリッド(American hybrids)

北米原産のユリの交雑種です。

Div.Ⅴ ロンギフローラム(Longiflorum lilies)

テッポウユリとタカサゴユリ、その他近縁種のみから育成された品種群です。総称して「テッポウユリ」「イースターリリー」とも呼ばれます。現在の分類では、この系統には交雑種だけでなく原種からの選抜種も含むため、「ハイブリッド」が付きません。

日本のテッポウユリは、キリスト教の聖花としての需要に応えて、明治時代から多くの選抜品種が作られて、本格的に欧米へ輸出されました。日本の輸出は第二次大戦で途絶えましたが、アメリカでは戦争中も品種改良をはかり、自国での供給体制が整えられました。

シンテッポウユリ(新テッポウ)は、日本で品種改良されたタカサゴユリとテッポウユリの種間雑種です。長野県の西村進氏が1928年頃から10年掛かりで作出しました。さらに戻し交雑を加え、農林省の種苗名称登録されたのが1951年です。その後も生産者や種苗会社で戻し交雑が続けられ、現在も新しい新テッポウが次々と作られています。

細い花型で甘い香り、花色は基本的に白。切り花は冠婚葬祭によく使われます。比較的丈夫で、庭植えもされます。

Div.Ⅵ トランペット・オーレリアン・ハイブリッド(Trumpet and Aurelian hybrids)

中国原産のリーガルリリーを中心に、サルゲンティリリーとキカノコユリの交雑種であるオーレリアン・ハイブリッドや、ハカタユリが複雑に交配された品種群です。ラッパ型の花で、橙黄色〜黄〜ピンクの花色に特徴があります。濃い黄色の遺伝子が注目されているグループです。

Div.Ⅶ オリエンタル・ハイブリッド(Oriental hybrids)

日本原産のユリを交配して育成された品種群。「ユリの女王」と呼ばれるカサブランカが有名です。

交配の元をたどれば1864年、アメリカでヤマユリと カノコユリの種間交雑が作られたことに始まります。その後サクユリが加えられ、パークマニーハイブリッドとなりました。第二次大戦後にササユリ、オトメユリ、1970年代に入ってウケユリが、最後は1972 年にタモトユリが交配されて、現在のオリエンタルハイブリッドが誕生しました。

アメリカを中心に品種改良が進み、パテントを買い取ったオランダで事業化されて、安定供給の体制が整いました。元は日本のユリですが、逆輸入して大量に消費されています。

大輪で強い香り、花色は白、ピンク、ローズ系。若干病気に弱く、他のユリに比べると高価ですが、豪華で人気があります。

Div.Ⅷ その他の交雑種群

Ⅰ〜Ⅶのグループは、近縁種間で交雑を繰り返したものです。現在では技術の進歩により、別グループ間の交雑も可能になっています。

ロンギフローラム・アジアティック(LA)ハイブリッド

1990年頃に生まれた、ロンギフローラムとアジアティック・ハイブリッドの交雑種です。アジアティックに変わって現在の主流となっています。

オリエンタル・トランペット(OT)ハイブリット

オリエンタル・ハイブリッドとトランペット・オーレリアン・ハイブリッドの交雑種です。

ロンギフローラム・オリエンタル(LO)ハイブリッド

ロンギフローラムとオリエンタル・ハイブリッドの交雑種です。

Div.Ⅸ 種および栽培種

交雑種以外のもの。原種、亜種、変種や、それらの選抜種(テッポウユリ類はDiv.Ⅴに含まれるため除外)です。


原種のユリの分類には、1925年のWilsonによる4亜属、1949年のComberによる7節、1988年のBaranovaによる11節などがあります。

これらは形態学的形質に基づいたもので、近年はさらに分子系統解析による知見も加えて見直されつつあります。

例:
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010751358
https://www.jstage.jst.go.jp/article/chiribunrui/70/1/70_0701-22/_pdf/-char/ja